早いうちから天才と呼ばれ、早いうちに姿を消す。これも1つの成功の形だと思います。しかし、もし自分が早咲きと遅咲きのどちらを選ぶと問われれば、遅咲きを選ぶと思います。僕自身も遅咲きだと思いますが、それだけではありません。正直に言うと、最後に笑う者こそが勝者だと思うからです。笑顔で人生の幕を閉じる、という響きにも聞こえるかもしれませんが、不幸せな顔よりも断然良いのではないでしょうか。
僕の今の職業はヨーローパに拠点を置くフリーのデザイナー兼イラストレーターです。ヨーロッパの最難関の芸術大学を主席で卒業し、王立大学の大学院にて「The Best Use in Drawing」というドローイングに関する賞を頂きながら卒業し、その後は教授の推薦で、現地の大学側から頼まれる形でイラストの講師として招かれました。日本国外の有名な新聞のイラストも手がけたり、活躍中の国際的なアーティスト達と合同で展覧会を開いたりもしてきました。特に覚えているのが、卒業展にて、建築家の方に自分が約45分程で描いた絵を高額で購入してもらえたことです。
小中高の頃は、決して絵がクラスで一番上手いという学生ではありませんでした。美術の成績も中の下で、時にはお恥ずかしい成績の時もありました。絵に全く興味がなく、興味の大半がサッカーのこと。とにかく絵を描くのが速く、逃げるようにしてサッカーをしにグランドに走って行ったのを今でも鮮明に覚えています。クラスのみんなのために、ゴールポストを確保しないと、他のクラスの人にグランドをとられてしまうからです。スタメンからポジションまで、紙に細かく描いて、まるで自分が監督兼選手にでもなったつもりで周りに指示を出していました。
絵の話に戻りますと、とにかく面倒な作業が嫌いでした。特に絵の具を混ぜて色を作り、レイヤーを作りながら塗って行く作業。じっとしていることが難しく、どうもゆっくりと時間をかける作業に向いていなかったようです。唯一できたのが、鉛筆を使ってシンプルに線だけで終わらせる絵でした。色を塗る必要もなく、2B鉛筆というシンプルな画材一本だけを使い、線画だけで終了できるのです。特に校庭を自由に歩き回り、好きな所に座って外で描く絵が好きでした。教室内で描く絵は嫌いで、速く逃げたくなりました。小さい頃、親の勧めで絵の教室に通っていたそうですが、唯一集中してやっていたのが、パチンコの台を作る作業と粘土でした。釘を配置し、打ち付けていく作業が楽しくて仕方ありませんでした。また、好きなスーパーヒーローを粘度で再現し、実際に手で作り上げて行く行程は面白かったです。それでも賞をもらう事はなく、先生からも一度も褒めてもらった覚えがありません。
大学も文学部に進み、大企業に入りサラリーマンを目指して安定した生活をしようと心掛けました。それでも就職氷河期だったためか、受けた会社は全て全滅。結局、バイトをしながら生計を立てて、興味を持ち始めたコンピューターやグラフィックデザインというものに引かれ始めていきました。理由は、目で楽しむエンターテイメントです。小さい頃からとにかく、目の中に飛び込むあらゆる魅力的なヴィジュアルが大好きでした。スーパーヒーロー、アニメ、キャラクター、ロボット、乗り物というとにかく強いインパクトのあるイメージに惹かれる性格なのでしょう。結局、4年制の大学を卒業後、専門学校でDTPの訓練を受けることにしました。とにかく楽しかったのを覚えています。卒業後に申し込んだデザイン会社には、ほぼ全滅というスタート。それでも、諦めずに作品を作り上げ、ようやく2社から採用通知が届きました。自分が選んだ会社にて、後から社長から聞いたお話ですが、自分以外の最終面接に残った応募者は全て芸大を卒業していたエリートだったそうです。それでも、自分のやる気に満ちた発言に社長が感動して、雇ってくれたそうです。結局、自分一人だけが採用を勝ち取り、都内にある有名な大型レコード店前に張り出される広告や世界でもトップのオートメーカーのPOPなどのデザインを手掛ける事になりました。出だしとしては十分すぎるくらいのクライアントの方々でした。その後、自分の中に貪欲さが膨らみ、ヨーロッパ留学に至りました。
この世の中は、僕のように平凡な人間がほとんどだと思います。世界でも、天才と呼ばれる人は一握りです。彼らはたいてい、不運にも何かしらのハンディキャップを抱えていたりします。そして、言い方は大袈裟かもしれませんが、天才という言葉は彼らに与えられたギフトであり、誰もが真似を出来ない神を彷彿させる能力を持っています。そして、私たちを心から感動させてくれます。自分にはこういうことが、自然とできるようには思えません。しかし多くの努力をすることで、できるようになります。そして、この多大なる努力と情熱こそが、我々を夢の実現へと導いてくれると信じています。何か興味を持ち始めたが、なかなか前に踏み出せていない方、遅咲きでもいいと思います。そして誰でも、「本気」でやればほとんどの事が出来てしまうのではないでしょうか。
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